いつか君に

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7人分の朝食はかなりの量があったが、綺麗に食べつくされていた。

片付けは、食器洗い機が造りつけられているため大した手間ではなかった。

なにより、初対面で好き嫌いがあっても可笑しくないのに、残さず食べてくれたのが嬉しく片づけが苦痛に感じなかったのだ。



それにしても、これから如何したらいいんだろう・・・。必需品はそれぞれ持ってきているみたいだけど、みんなの生活パターンなんて知らないし・・・。生憎雅人は用事があるとかで、でかけてしまった。

それに、皆なにしてる人なんだろう。6人ともありえない位のかっこよさ・・・。少しくらいなら、聞いても答えてくれるかな。

それに・・・明らかにツバサって人は10代っぽいし・・・。

取り合えず、薬と水を持って一人ずつ回ってみよう。何か聞けるかもしれないし、今後の予定とかあるかもしれないしね。







「具合どう?」

真奈美は和室の一番奥に横になっているトシヤに話しかけた。

「なに?そんなに俺に会いたかったの?」

茶目っ気たっぷりにトシヤが答えるが、真奈美は淡々と答えた。

「熱に侵されて、脳みそ溶けてんじゃない?・・・そんだけ言える元気があれば大丈夫ってことね。」

トシヤは、一見なんでもない風を装っているが、先ほど熱を測った時にかなりの高熱だったのだ。 もちろん真奈美はそれを知っていたので、心配していたのだ。

心配するだけ無駄かも・・・。そう思い立ち去ろうとした。

「俺さぁ・・・。ヤバいくらいに体が熱いんだわ・・・。」

立ち去ろうとした真奈美を引き止めるとトシヤは言った。

さっきまでのふざけた口調とは打って変わって、低い落ち着いた声だった。

「だから、大丈夫か聞いてんじゃない。もう・・・、ちゃんと薬飲んでから寝て。他に何かしてほしいことある?」

「ん〜〜〜。大丈夫じゃないかも・・・。取りあえずシャブらない?」





      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

   いまコイツなんて言った????

「もうヤバいいんだわ・・・。口でして?」

耳元で、甘い声色で囁いた。普通の女なら大抵これでコロッといくであろう熱のこもった視線に甘い声・・・。



 しかし、世の中には例外がある。

    「ふざけんなーーーー。」



おおっと・・。思いっきり叫んじゃったよ。後悔するも時すでに遅し・・・・。

「どうした?」 「トシ、なにやった〜?」 などなど・・・。

方々から声は聞こえるが、仕切りのせいで顔は見えない。

「ごめん、なんでもないから。」

周りの皆に聞こえるようにそう告げ、今度こそ立ち去ろうとする。

「してくれないの?・・・雅さんにしてんだろ?俺にもしてよ。」

相変わらずヘラヘラとした口調で、下世話なことを聞いてくる。

「誰がするか!!!!!!・・・はぁ、雅人からなんて聞いてるか知らないけど、そういう関係じゃないから。」

真奈美はそれだけ言い残すと、トシヤの隣に寝ているユキの元へ向かった。

トシヤが、ぽか〜んとした表情で何かを考えているようであった。



「ユキ〜さっきは叫んでごめんね。隣には変態さんがいるから・・・。」

真奈美はユキの枕元に座ると、先ほどのことを謝った。ユキは体を起こし真奈美から薬と水を受け取った。

「ありがとう」

若干、声がかすれている。トシヤは眼の覚めるような金色の髪をしているのに対し、ユキはほのかに明るい茶色い髪だ。

他の面々に負けず劣らずの美形である。何より、ひとつひとつの動作が綺麗で思わず見とれてしまうほどだ。



「ユキは、体調如何?」

「う〜ん、まだちょっとしんどいかも。でも、久々においしいものも食べれたし」

そういってニコッと微笑んだ。

く〜〜〜だからそういう笑顔はダメだって。綺麗過ぎる・・・。

「今日さぁ、仕事はいってるから後で起こして貰ってもいい?」

「うん、いいけど・・。何時に起こせばいいかな?・・・てか、仕事って・・・。」

「あ〜〜俺ねホストなんだ。なんつーか、店で飲んだりするほうじゃなくて、一緒にデートみたいなことする方。 まぁ出張ホストってやつ。昼の1時に待ち合わせだから・・・11時半くらいに起こしてほしいんだけど。」

「は、は、は、ホストですか・・・。見えないね〜。わかった、11時半ね。ご飯はどうする?軽くつまめるものにする?」

トシヤは間違いなくホストだろうと思ったけど、ユキまでもか・・・。ユキはホストって言うよりモデルって感じなのになぁ〜。 それにしても、他の奴らも皆ホストだったら・・・。

「マジで?じゃぁ、軽くでいいんでお願い。」

「OK。じゃぁそれまでゆっくり休んでね。」

「・・・なぁ、ホスト嫌い?」

「え?・・・なんで?」

「う〜ん、なんていうか、さっき俺がホストだって言ったときなんか考えてるようだったから。」

「う゛・・・。実は6人全員ホストならどうしようって考えただけ。」

「あはは。ホストは俺とトシヤだけだから安心して。トシヤもアレでいい奴だから」

「そうなんだ。じゃぁね。」

ユキが布団に横たわるのを確認すると、そっと立ち上がり仕切りの隣へと向かった。



「ツー君大丈夫??」

「遅い」

むっとしているツバサをよそに、薬と水を差し出す。

「はい、これ飲んでね。」

「ヤダ」

「も〜ヤダじゃないでしょ・・・。飲みなさい。」

他の面々より明らかに幼い面立ちなのがツバサだ。だがこちらも綺麗な顔には間違いない。 ジャニーズ系の顔は熱の為か薄っすら赤い。

「今まで、なに話してたんだよ。」

「なにって、いろいろだよ・・・。それより薬!」

「いろいろってなんだよ。」

「も〜教えるから、薬飲んで?ね?」

「・・・・嘘つくなよ。」

ツバサはそういうと真奈美の手から水と薬を奪い取り一気に飲み込んだ。

「・・・苦い。・・・・で?」

「エライエライ。飲めるじゃない。何の話っていうか、今日の予定とかあるか聞いたの。 私みんなの生活リズムとか知らないからさぁ・・。あとは、仕事のことかな。」

「ふ〜ん・・・。俺夕方に出かけるから。」

「体大丈夫なの?ツー君は仕事じゃないよね?・・・言いたくないなら良いけど」

「別に隠すほどのことじゃないよ。・・・女の人と会う。それだけ」

「そう・・・。じゃぁ、取りあえず昼までよく寝てね。そしたら体調も大分よくなると思うし。」

つ〜君はなんでもないようにさらっと言ったけど、女の人って?彼女かな?でも彼女が居たらその人のところに最初っから行けば良いような・・・。 わかんないな。かと言ってこれ以上病人に突っ込んで聞くのもね・・・。

「一緒に寝て」

「・・・・はぁ?・・・」

今なんて言ったの?おいおい。

「冗談だよ。じゃぁな」

はー。冗談かよ・・・。この手の冗談はホント勘弁してほしい。

「じゃぁオヤスミ」

もう眼を閉じているツバサに向かってそっと囁きその場を後にした。



6人の内3人と1対1で接触したが、思った以上に疲れる・・・・。

あとは、コウタとキョウスケとリョウか・・・・・・・。
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