いつか君に

― 4 ―


君が必要とする人は誰?


君と未来を見るのは誰?


やっと掴んだキセキを・・・




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真奈美は、朝から眉間に皺を寄せながらキッチンに立っていた。
その背中には、思いっきりバリアが張り巡らされているかのように空気を ぴりぴりさせていた。
それもそのはず、昨夜同居人の雅人がその友人ら6人を連れ帰っただけでなく、 しばらく面倒を見てほしいと頼まれたのである。

真奈美は、手に包丁を握り野菜を刻みながら、今後のことを考えていた。
コンロの上には大きな土鍋がコトコトと音を立てていた。

「そろそろ、いいかな」

誰に言うでもなく、真奈美はコンロの火を止めた。
そしてリビングで寛いでいる男に声を掛けた。

「ご飯できたんですけど、食べます?」

パッと見た感じからホストであるような気がする金髪の男に声を掛けた。

「やった〜久々にまともな飯が食える!」

男はにっこり微笑んでからダイニングテーブルにやってきた。

今日の朝食は、風邪を引いているというお客様(!?)のための胃に優しく栄養がある物を!という感じである。
大きな土鍋には、雑炊が入っている。はじめはお粥にしようと思ったが、真奈美自身がお粥より雑炊のほうが好きなため 雑炊にしたのである。

金髪の男が、席に着き目の前の料理を凝視した。
「あんな短時間でこんなに作ったの!?」
男は呆然とそこにある料理たちをみてつぶやいた。
「マジうまそうなんだけど・・・いただきます。」
男は目を輝かせ箸を握り、料理を次々に口に運んでいる。
真奈美は、さらに盛られている料理をバランスよく取り皿に盛り男に渡した。
「口に合うといいんですけど・・・。どうぞ」
「マジでうまい。いいなぁ雅さんはいつでもこんなうまいもんが食えるのか〜。」
男は感心したように料理を食べていた。

真奈美は、ずっと疑問だったことを聞いた。

「あなた・・・誰?・・・・・・・・・」

真奈美にしてみるととても重要なことだった。
昨夜、思いっきり抱きしめられキスまでしてきた上に、朝は同じ布団の中にいたのだ。
いったい、何がどうなっているのかわからなかった。
自身の脳内メモリーにこの男と該当するような男はいなかった。

「あ〜そういえば、昨日はばたばたしてて自己紹介も無かったっけ!?」
「俺らは皆、雅さんの知り合いだよ。今はそれしかいえないけど・・・。」

「ちょ・・・それしかって、名前くらいいいじゃない?なんて呼べばいいかわからないし。」
「ん〜・・じゃぁ、ご主人様って読んでくれる!?」

金髪の男はにっこり微笑んでいた。
真奈美の我慢を超えた瞬間でもあった。
会って早々に、キスされて朝食までご馳走したのに、名前も教えてもらえなかったのだ。

真奈美は、無言で立ち上がり男が何か言うのも無視して、リビングの奥にある、雅人のプライベートルームに 直行した。

もともと、真奈美と雅人はお互いがプライベートルームに使っている部屋に鍵はついていないの。
真奈美は、勢いよく雅人の部屋のドアを開けた。
そして、ベットの側に歩み寄り大声とともに、布団をはいだ。
    「起きろーーーーーーー。」

雅人はモゾモゾと身じろぎ、真奈美を見上げた。
「もうちょっと・・・・・。」
消えそうな声でつぶやくと、真奈美の腕を引きベットに引き込もうとした。
真奈美は、再度叫ぶと、雅人はおぼろげな表情で、観念したというように体を起こした。

雅人は寝るときに服を着ているのを嫌がる傾向にあったが、真奈美が一緒に暮らす上で下着だけでもつけてほしい と懇願したため、下着だけはつけてくれるようになった。
部屋着に手早く着替えさせ、雅人をリビングに引っ張りだした。

ぼーっとしている雅人の前にブラックコーヒーをだす。いつもの習慣だ。
雅人はコーヒーが好きなわけではないが、寝起きにこのコーヒーの香りを嗅ぐ事をこのんでいたのだ。
コーヒーを一口飲むまでは、何も話さないため、このような無口で能面のように表情もない雅人を見るとたいていの人がひるんでしまう。

キッチンで朝食を取っていた金髪の男も雅人に二〜三言話しかけたが、雅人の発しているオーラに負けたかのように、声を掛けるのをやめていた。

真奈美にしてみるといつものことなので、特に取り合うことも無く、雅人を睨み付けていた。

「おはよう」

雅人はコーヒーを一口のみ、目の前にいる真奈美にニッコリ微笑んだ。

金髪の男はただただ呆然としていた。
先ほどまで怖いくらい無表情だった男が、 優しい声色で目の前の女に微笑みかけたのだから。
雅人と真奈美の会話に呆然としつつ耳を傾けていた。

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