いつか君に ― 3 ― 君のことが頭をよぎる。 君の名前すら知らない。 タオルも氷枕もこれでokっと。 さっきのキスは、寝ぼけてて誰かと間違っちゃったんだよね・・・。 忘れよう。 それにしてもよく寝るなぁ。変な時間に起こされて、 動き回ったせいか眠気が引いちゃったな。 まぁもうすぐ雅人も帰ってくるだろうし、熱のある病人を放っておくわけにもいかないし、診ていてあげますか・・・。 真奈美がリョウのタオルを替えていると、またインターホンが鳴った。 ゲストルームから出て、玄関に向かうと雅人が入ってくるところだった。 「おかえり。わざわざ・・・・」 ・・・・・・・・・ わざわざインターホンなんて鳴らさなくてもいいのに。と言おうと思っていたが、目の前の状況がいまいち理解できなくて、固まってしまった。 呆然とした真奈美をよそに、雅人と一緒にわらわらと数人の男たちが入ってくる。そのうちの一人が、まっすぐに真奈美の前までやってきた。 20代前半の金色の髪でスーツをさらりと着崩している、いかにもホストらしい男だ。 「俺の事、待っててくれたわけ?うれしいな」 男は言い終わると同時に、真奈美に覆いかぶさるように、キスをした。 男の右腕は真奈美の後頭部を、左腕は腰を抑えていた。唇をわって口腔に進入しようとするが、真奈美は頑なにそれを拒み、全身をじたばたさせ、その男のキスから逃れようとした。 雅人と一緒にいた他の男たちによって、何とか引き裂かれた。 「ちょっとーーーーーなんなのよーーーー」 都内のマンションの一室でとてつもない怒鳴り声が響き渡った。 ことの始まりは、雅人とその友人らとの約束にあるらしい。(但しどんな約束なのかは教えてもらっていないが・・・。) それによって、雅人の友人らはことごとく風邪をひいてしまった。 放っておけば、このまま無茶をしかけない連中であるため、面倒をみることにした。ということらしい。 一足さきに来ていたリョウもその中の一人で、雅人を入れて合計7人の男たちと暮らすことになる。 ・・・・・・・・・ なんていうか・・・ありえない。 何で見ず知らずの、しかも男と一緒に住まなきゃならないんだ。 私はいったいどうなるの!? 「ちょっと、ごめん。頭がうまく働かないみたい。・・・朝まで少し寝せて。」 真奈美は雅人にそう告げると、いつも使っている自室へ向かった。 部屋に入りベットにもぐりこみ、先ほどの話を理解しようとしたが、いまいち理解できないまま眠りについた。 そして、起きたらベットにいたのが昨夜いきなりキスしてきた男なわけで、まったく持って理解できない。 おかげで朝から、警戒心むき出しでキッチンに立っているのだ。 |