いつか君に ― 32 ― Kouが突然まじめな顔をしていたので、真奈美は驚いていた。 「本当にいろいろと忙しかったし・・・。Kouとkeiのことは応援してたよ?」 Kouはため息を一つついてから、真奈美を見つめた。 「応援って何?」 Kouの冷たい声が部屋に広がる。 「二人とも頑張ってるな・・・。とか、元気そうだなって・・・」 最後のほうは殆ど消えそうな声であった。 Kouの眼差しに耐えられなくなった真奈美は視線を外した。 「やっぱり、仕事じゃなきゃ関わらないってことだろ・・・・」 Kouの少し切なさがある声がこぼれる。 「そんなこと無いって!本当にいろいろあったの〜。昨日だって変な人たちのせいで大変だったし・・・。 それに、Kouだって一回も連絡無かったじゃない? そっちこそひどくありません?」 真奈美は顔を上げKouに向かって言葉を投げかけた。 「俺は・・・・・・・・」 「Kouと何の話してたわけ?」 先程、Kouが何か言いかけたとき、実にタイミングよくkeiが戻ってきた。 そして次はKouが事務所のほうへと消えた。 「何って訳じゃないけど・・・」 真奈美は先程のKouのことを思い出していた。 ふと見せてくれる優しい眼差しに、射抜くような鋭い眼差し・・・そして切なさのある声。 余り感情をむき出しにしないKouの変化が真奈美には驚きだった。 「ふぅ〜〜ん?ナイショデスカ?」 keiはおどけながら言う。 まぁいいけど、と微かに呟くと、ソファに転がった。 keiはソファの端に座っていた真奈美の膝に頭を置いた。 ちょっと・・・・どうしよう。 硬直する真奈美をよそにkeiは「5分だけ」といって目を閉じてしまった。 自分の膝の上にあるkeiの顔は、それだけでもきれいな顔であった。 思わず見惚れていたが、5分が過ぎるころにはどうしたらいいのか分らなかった。 keiもKouも新曲の発売に関して忙しい日々を送っているのは理解できる。 もしかしたら、睡眠時間を削っているのかもしれない。 それくらい曲に対してまじめに彼らが取り組んでいる事を知っている。 私には彼らと同じように真剣に取り組めることはない。 写真は確かに好きだけど・・・なんだか違う気がする。 夢中になれる何かではない。 でも、それでいいのかもしれない。 夢中になったからといって、それが上手くいくとは限らない。 期待して泣きを見るような真似はしたくない。 一体いつからかな・・・? 期待する、何かを望むのが怖くなったのは・・・・・・・。 「どうした?」 いつ起きたのだろうか? keiが目を開け見つめてくる。 keiの手が、頬にかかる私の髪をそっと払いのける。 ハラハラと舞い落ちる髪・・・。 私の髪をそっと梳く手・・・。 記憶の底に沈めた、いつかの光景に似ていた。 「keiが起きないから、どうしたらいいかって困ってた」 苦笑いを浮かべながらkeiに言葉を返す。 思い出にはそっと蓋をした。 |