いつか君に ― 33 ― keiが頭を真奈美の膝から上げると、まっすぐ真奈美を見据えて言った。 ・・・・・・・・ 「意地っ張り?」 訳が分らないといった表情で真奈美は、keiを見返す。 「そっ、意地っ張りめ」 keiはそう言うと立ち上がり、真奈美の頭をぐりぐりっと数回撫で回した。 「何よ??意味がわかんない」 「ハイハイ」 keiは、その眼差しに優しさを秘めたまま真奈美を見つめた。 「・・・真奈美が言いたくないなら、何も聞かないけど、 辛かったら、いつでも言えよ? 真奈美は、ずーっと前から意地っ張りで、いつも自分ひとりで何とか しようとするけど・・・、たまには回りに目を向けろよ・・・。 貼らなくても良い意地まで張る必要は無いんだから。 それとも、俺は愚痴の一つもこぼして貰えないくらい、信頼が無い?」 「え・・・・・」 keiの真剣な声と優しい温もりを頬に感じ、真奈美は固まっていた。 keiにもKouにも、すごく優しくしてもらって・・・これ以上一体なにを望むのだろうか?? 「いいよ、深く考えなくて・・・ただ俺は無理はして欲しくないってこと」 keiはこれでこの話は終わりだという感じで、ポンと真奈美の頭に手を置きすっと立ち上がった。 「真奈美・・・」 揺り動かされながら、名前を呼ばれ、真奈美はハッと目を覚ました。 「ご、ごめん」 KeiとKouに見つめられた真奈美は、顔を真っ赤にしていた。 そっと時計を見ると一時間弱、眠っていたらしい。 ・・・・・・・・ keiと話していると、Kouも事務所から戻ってきて、二人は作詞したり作曲をしたり、時には二人で歌ったりと そんな事を繰り返していた。 真奈美は、その二人の様子をみていたのだが、昨夜余り眠れなかった影響だろう 寝入ってしまったようだ。 真奈美は、二人のレコーディング前にこうして、練習に顔を出すことがこれまでにもあった。 このときに、どういった写真を撮ろうか、思案するのだ。 それなのに・・・私ったら途中で寝ちゃうなんて・・・。 もう、穴があったら入りたい〜〜〜〜。 「昨日、いろいろあってなかなか眠れなくって・・・」 いい訳じみてるのは重々承知しているけど、思わず口走ってしまった。 「いいって気にするな」 「寝てもいいけど、風邪引かれたら心配だからな・・・」 keiとKouは、優しく真奈美を気遣った。 2人の気遣いに、ますます申し訳なさで一杯になる真奈美であった。 風邪という言葉で、真奈美はマンションに放置してきた面々の事を 思い出していた。 熱があるくせに、無理をする。 苦しいくせに、笑顔で接客する。 ダルいのに、仕事をする。 風邪を引いていても、平然と仕事をしていた彼らの事をすごいと思う反面 無理をして欲しくないと思う。 朝、(といっても昼だが)バタバタとマンションを飛び出してきてしまって 何も彼らの事を気遣うことが出来なかった自分がいやになる。 もう夕暮れ時だ。冬の空は暗くなるのが早い。 とはいえ、ここは大都会・・・闇に染まることは無いけれども。 今夜も彼らは、無理をして仕事に行くのだろうか? 私には何も出来ないのかな・・・? 彼らのために出来る事といったら、ご飯とか?? それでもいっか。 |