いつか君に

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今から数年前にデビューし、ラブソングでその年の音楽のあらゆる賞を総なめにしたミュージシャンがいる。


‘Two−K’と呼ばれる男性ユニットのことである。


二人の声はまったく違った性質を持っており、2つの声の融合が生み出す音は誰をも魅了した。


甘いマスクと伸びやかな歌声、切ない歌詞、透き通るようなメロディ・・・・。

その二人の名前は、KeiとKouである。


2つの声とお互いの頭文字であるKのイニシャルを入れたなんとも安易なユニット名である。




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「急な話だからびっくりしたよ」

真奈美は目の前の男達にそう告げた。


そう、今目の前に居るのはkeiとKouの二人である。


先程廊下であった後、二人と共に事務所の地下にあるレコーディングスタジオに向かった。


「こんな風に用事を作らないとなかなかあえないじゃん?」

Kouがおどけながら返す。

「そうそう、真奈美は人の名前本当に良く覚えないから、忘れられすかもしんない からねーー。」

keiもKou同様おどけながら返す。



「もーーー二人して相変わらずなんだから・・・。 いくらなんでも、こんな有名人なら忘れないよ!? 二人の曲なんていろんなところで耳にするよ? 着メロにしてる人とかもかなり居るし。 そういうの聞くたびに二人とも元気かな? って思ったりしてたよ??
元はといえば、二人が忙しいからなかなか会えなかったんじゃない?
コンサートだったり、PVだったり、作詞作曲とか・・・。 」

keiとKouがお互いに顔を突き合わせ、「はぁ〜」っとため息をついた。

「その割には、一度も電話もメールもナシですか??」

Kouがジッとまっすぐに真奈美を見据えながら問う。

「そうそう、一回くらいメールとかあってもいいんじゃねぇ?」

keiもKouの同調する。



「う〜〜〜〜。そんなこと言ったって・・・・。」

真奈美は返答に困ってしまう。

決して二人の事を忘れたわけではないが、二人は所謂芸能人なのだ。

自分との間に何か壁があるような気がして、メールも電話も出来なかったのだ。

こうやって会話をする分にはそういった壁を感じることは一度も無いにせよ、 二人の生きている環境がとても繊細なものである事を、真奈美は知っているのだ。

二人の仕事は定時に始まって定時に終わるものではないので、 どういったタイミングで連絡するといいか分らないのである。

二人と対等になりたいと思ったことは無いが、邪魔することはしたくは無い。
というのが真奈美の心境だ。



困惑する真奈美を見てkeiもKouもこれ以上同じことで問い詰めることは しなかった。



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少しの雑談の後、keiとKouは今度発売予定の曲のサビ部分を 歌った。


「すごい。すごい。」


真奈美は手をパチパチと叩きながら、歌い終わった二人に賛辞を送った。



「ん〜〜〜ありがとう。大体こうなる予定ってところかな。」

keiが譜面を確認しながら言った。

「そうだな〜。後は少しずつの調整だし・・・。」

Kouもkeiに確認するように言う。



「本当にkeiとKouの声は綺麗だよねーーー。 なんか、すっと体の中に沁みこむ感じ・・・ 歌詞も好き」

真奈美は二人の生歌の余韻に浸りながら呟いた。



「名倉先生には良い写真とってもらわないといけないからね」

keiが含み笑いしながら言う。

それに対しKouも「そうそう」といって頷いた。



「「俺らのCDのジャケットは名倉大先生にかかってますから」」



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