いつか君に ― 23 ― コウタの寝ていたスペースに真奈美が来たときそこには誰もいなかった。 「コウタ・・・」 真奈美は思わず小さな声でコウタの名前を呼ぶが、帰ってくる返事は無かった。 コウタはどこに行ったの? てっきり寝ていると思ってたのに、いないなんて・・・。 リビングかな? 真奈美はそっと和室を後にした。 「寝てると思ったら、居ないんだもんびっくりした。」 真奈美はそう言って、ダイニングテーブルに居るコウタに近づいた。 コウタは、自分のノートパソコンを前に、なにやらカタカタとリズム良くキーに指を滑らせる。 真奈美が来たことに驚きつつも、言葉を返した。 「どうした??もうかなり遅いけど・・・。もしかして起こした?」 「私はみんなのこと看に行ってたの。そしたら、コウタが居ないからどこに行ったのかと思って。」 「そうだったの?ごめんごめん。なんだか寝れなかったからさ・・・。」 「う〜〜ん。私のことはいいけど、コウタは日中も寝てたから寝付けないもんね。ごめんね気が付かなくて。」 「いや、一回は寝ようと思ったんだけど、結局俺って一番寝てるわけじゃん?なんか寝れなくって起きちゃった。」 「そうだね、朝食の後にも皆のところ順番に回ったんだけど、コウタは寝てたみたいだったから特に声もかけなかったし・・・。」 「朝も来てくれての?・・・勿体ね〜、俺なんで寝てたんだろう・・・。」 「そんな勿体がるようなもんじゃないよ〜。クスリと水を持って意行っただけだし、コウタが気持ちよさそうに寝ててほっとしたし。」 「あ〜〜確かに、起きたら水とかあったかも。・・・・・まぁ、今こうやって俺のこと心配して探しに来てくれたってのがうれしいよ。」 コウタは柔らかな微笑を真奈美に向けた。 「そんなにありがたがられるとこっちが困るよ。それに眠れないかもしれないけど、まだ体調も万全じゃないんだから早めに休んでね?」 「あぁ・・。分った。そろそろ戻るよ。」 「うん、何かあったら言ってね。」 コウタはパソコンの電源を落とし、立ち上がり和室の方へ向かった。 真奈美とすれ違いざまに、少し前かがみになって「オヤスミ」と囁くと同時に真奈美の頬にそっと唇を落とした。 ・・・・・・・・・ちょ、ちょっと・・・なに??? 真奈美は一瞬の流れるようなコウタの動きを理解できなく、暫し立ち尽くしてしまった。 今、コウタの唇が頬に触れた!? 真奈美は真っ赤になって唇の触れた頬にそっと手を当てた。 真奈美は気合を入れなおし、キョウスケの元へと向かった。 しかし、トシヤ、ユキ、ツバサ、コウタを回っているうちにずいぶん時間がたってしまっていたため、 キョウスケは眠っていた。 キョウスケの寝顔も綺麗なんだよね。 美容師なだけあって、服とかのセンスもすごくいいし・・・何より今日メイクしてくれたのはちょっと嬉しかったな。 あっメイクの後にキスしちゃったんだっけ・・・。 思い出したら恥ずかしいなー。 真奈美は少し頬を染めていた。 キョウスケがメイクをしてくれた時の眼は本当に真剣で綺麗だったな。 アノ眼に映るほどの価値がある人が羨ましいな。 私にはもったいないくらいの優しさと強さのある眼だった。 それにそっと肌に触れる手も優しくってすごく心地よかったもん。 まるで魔法みたい・・・。そんな感じだったな。 今までもメイクってして貰う機会はあったけど女の人ばっかりだったからこんな風に感じるのかな。 う〜〜〜ん。わかんないな。 こっちもか・・・・。 最後にリョウのところにやってきた。 寝てる・・・。当たり前か。 なんていうか、リョウとは一番話らしい話はしてないかも。 最初に雅人に連れてこられてのがリョウだったんだよね。 相変わらず綺麗な寝顔。さらさらの髪だな・・・・・。 なんか、起きてるときに余り見れないんだよね。 良く目が合うから、びっくりしちゃうっていうか・・・。 目が合うたびに、思い出しちゃうんだもん。 ・・・・・・・・・・キスしたこと・・・・・・・ したっていうより、されたってのが正しいかも・・・。 しかも、本人は寝ぼけてたみたいだし、きっと覚えてないだろうから余計に困るんだよな。 寝ぼけてたにせよ、キスしてきたって事は普段からそーゆーことをする相手が居るって事なのかな。 無意識の意識って事はきっとそういうことだよね。 そーゆー相手が居るならその人のところに行った方がいい気もするんだけどな。 きっと綺麗な人だろうな。リョウが舞台俳優してるって事は相手の人も同業者とかかも知れないもんね・・・。 今日見たバーテンの格好もすごく様になっててかっこよかったっけ・・・。 リョウの作ってくれたカクテルすごく美味しかったな〜。 まぁ、私が一人であれこれ考えてもしょうがないことなんだけどね。 真奈美は少し苦笑いを浮かべ、そっと部屋を後にした。 |