いつか君に ― 22 ― トシヤに握られている手をそっとすり抜けた。 トシヤの考えていること、行動が理解できない。 初めて会ったときに、何の躊躇も無くキスをしてきた癖に・・・。 さっきのトシヤはすごく変だ。何が変なんだらろう。もやもやするこの感じは何!? 具合が悪くて、気が弱ることは誰にだってあることだと思う。 それにしても、ホストクラブでNO1と言われる自信家で俺様主義なトシヤがこんな出会って間もない私に あそこまで弱さを見せるとは思わなかった。 さっきトシヤとの会話の中で私の中で懐かしい思い出が胸を過ぎった。 とても・・・・・・・・・・・・とても・・・・・・・・・・・切ない思い出だった。 思わず目頭が熱くなるのを堪えた・・・。トシヤに「そんな顔するな」って言われたときは本当に驚いた。 あの時、いろいろな思いが胸を駆け抜けて、溢れそうな何かがあったけどトシヤに優しく包まれた手が私のココロを穏やかにしてくれたのは間違いなかった。 情けないことに、何も返す言葉が出てこなかったなぁ・・・。 何も聞かないでいてくれたトシヤにちょっぴり感謝かな。 真奈美はそっとその場を離れた。 トシヤの次にユキの元へ向かった。 真奈美が近寄るとユキがそっと目を開けた。 「ごめん。起こした?」 「いや、俺元々夜型だからね。俺としては真奈美が来てくれて嬉しいよ。 思わず自分のいい様に解釈したくなるよ。」 「私なんかが来て感謝されるなんて・・・大げさなんだから〜。 そんなお世辞を言われても何も出ませんよ。」 真奈美は小さくくすくす笑った。 「お世辞のつもりは無いんですけど。・・・どうせ他の奴らのところにも回る予定なんだろ!? このままココに引き止めておきたいし・・・。」 「なにいってるの〜ユキまで具合が悪くてココロ細いのかな? ユキは一番しっかりしてそうなのにね〜。」 ユキは苦笑いをした。 「男なんていつまでも、わがままな子供なんだよ。」 「ハイハイ。わがままなユキ君は何か必要なものはありませんか?」 「真奈美が必要なんだけど・・・。」 「私!?もう、なに訳のわからないこと言ってるの?あんまりからかわないで。」 もう!ユキってば・・・。変に勘違いしちゃうじゃない!!うぅ〜〜〜きっと今私の顔は真っ赤だろうな。 「冗談じゃないんだけどな〜」 クスっと笑ったユキの顔が夜の薄闇の中とても綺麗で真奈美は思わず見惚れてしまった。 真奈美の頬にそっとユキの手が触れる。 真奈美はハッと我に返る。 「どうしたの!?」 ユキに向かって問いかける。ユキの手は真奈美の頬を優しく包んでいる。 何も言葉を返さないユキを真奈美は不思議そうに見つめた。 一体どうしたんだろう?? 真奈美が再度声をかけようとしたとき、ユキが口を開いた。 「今日さぁ〜。「crown」から出てきたときあまりにもかわいくてビックリした。 キョウスケとトシヤから掻っ攫ってやろうと思うくらい。」 「も〜〜なに冗談言ってるの?私なんて掻っ攫う価値は無いよ〜。」 真奈美は苦笑いをしつつ答えた。 「しかも、やたらとトシヤの心配してるように見えるし・・・。それにコウタには自分から腕を組んでいくし? 一体どうなってんだって思ったよ。ツバサには抱きつかれてるし?」 ユキが抑揚の無い声で真奈美を視界に捕らえてまま話す。 ユキの手は頬から離れて真奈美の髪に触れていた。そっと優しく髪を撫でる。 真奈美にはユキがなにがしたいのか分らずされるがままになっていた。 ユキはただただまっすぐ真奈美を見つめた。ふっと二人の視線が交わった。 「ユキ、具合悪いんだからはやく寝て??」 真奈美は少し顔を赤く染めてユキから視線を外しその手から逃れるように体を引いた。 も〜〜ユキに見つめられてる気がして、赤面しちゃうよ!! もう自意識過剰だなぁ私って。 「今困らせる気は無かったんだごめん。」 ユキは真奈美から目を逸らして答えた。 「別に困ることは無いって言うか・・・なんていうか・・・・そ、その何かあったら遠慮しないで声かけてね?」 「あぁ。わかった。」 「うん。じゃぁオヤスミ」 「オヤスミ・・・・・」 三人目に向かったのはツバサのところである。 流石にツー君は寝たかな? 真奈美がツバサを覗き見ると、ツバサは小さく身を固めるように眠っていた。 その寝顔は、とても綺麗なものであったが、一抹の寂しさを醸し出していた。 なんだろう・・・ツー君って良く分らないな。 まだ高校生なのに、フッと大人びた顔する時があると思えば、抱きついてくるときのような幼さもある。 どれもみんなツー君のはずなのに・・・なんだか掴めそうでつかめない人だな。 あまり聞きたくは無いけど、高校はいいのかな!?明日(正確には日付けはすでに変わっているから今日)は土曜日なんだけど・・・。 こうやって寝てるところを見ると、なんだか放って置けない気がする。 こういうのが母性本能ってやつかな!? 真奈美はずれている布団をそっとかけ直しツバサをそっと見守るように見つめた。 |