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いつか君に ― 19 ― 海田はトシヤの様子から、真奈美の言わんとすることが理解できた為、その要求をすんなりと受け入れた。 無論、店全体の利益などは瞬時に計算されている。これ以上体調不良のまま店に出続けるよりなら、 安静にして早く回復して貰うほうが、良いということだ。 しかし、海田は驚いていた。トシヤはここでＮＯ１の売り上げを誇るホストである。 雅人が抜けた穴を埋めたのは間違いなくこんトシヤという男で、ホストという仕事にプライドを持っているのを知っている。 いくら体調が悪かろうが、客の前ではそんな素振りは微塵も見せていなかったのだ。 真奈美とトシヤを見ていてもそれほどの仲ではないらしいのは分ったが、先ほどの真奈美とキョウスケの会話で、出会って一日目であるというのには驚きを隠せなかった。 その短時間でトシヤの体調の限界を感知した”カナ”と言う人物の凄さを感じていた。 海田はトシヤの客が帰ると、トシヤに帰るように告げた。 初めは困惑していたトシヤであったが、海田の説得によりスタッフルームに向かった。 スタッフルームにはいると先に来ていた真奈美とキョウスケが心配そうにトシヤを迎えた。 3人で店を出ると、店の側で立っている長身でスリムな男性のシルエットが見えた。 ええええーーーーーーーーーーーーーー！！ その男性は、今日の昼過ぎに真奈美と一緒にケーキを食べた人物、つまりユキであった。 真奈美は突然のユキの出現に驚いたが、他の二人に驚いた様子は無く実に淡々としていた。 「えええーーーー。ユキだ！！どうしたの？偶然だね〜〜」 真奈美は驚きの声を上げるが、周りの3人はいたって冷静に答える。 「偶然なわけあるか・・・。」 「そうそう」 「偶然で、リョウにあったり、キョウスケにあったり、トシヤにあったり、挙句に俺にあったり・・・。 普通むりでしょ。」 ユキの発言に真奈美は驚いた。ユキの言わんとしていることがなんとなくではあるが真奈美は理解できた。 「それって、・・・・元々決めてたってこと？？」 「「「そーゆーこと」」」 3人の男たちの声が一つに重なっていた。 「ど、どーして？」 「俺たちの事を知って貰う為かな。」 真奈美の問いにトシヤが答えた。 「まぁ、トシヤがぶっ倒れそうっていうのは、予定外だったけど。」 キョウスケがおどけて言う。 「じゃぁサクッと絞めに行きますか！！」 ユキの掛け声とともに、トシヤとキョウスケが歩き出した。 真奈美は聞きたいことがいろいろあるが、聞くまもなく歩き出した3人に連れられて歩き出した。 いったい、なんなのよ〜〜〜〜〜〜。 真奈美と3人の男たちがたどり着いたのは、先ほどまでコウタと一緒だった「bubble（バブル）」というバーであった。 本当にどういうことなの？？？？ 真奈美には訳が分らなかったが、3人に促されるまま店の中に入った。 店内は先ほどより客が増えていた。店内に入ると、殆どの女性客の視線がある一箇所に向いていることに気が付いた。 その視線の先を辿ると、綺麗な女性客が男性に接していた。 真奈美は、女性客の視線の先に居る男性を見てフリーズした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 そこには間違いなく知った顔が居たのだ。コウタとツバサである。 真奈美は呆然としつつも、案内さえれた席に3人の男性陣にエスコートされていた。 よくよく観察すると、綺麗な女性客がコウタとツバサに声をかけているようだ。しかし2人はそれを適当に流しているようであった。 中年のマスターと思しき人が真奈美たちの注文を聞き、シェイカーを降り始めている。 「ちょっと待って！！ここでのんびりしてる場合じゃなくない？？」 真奈美は男たちが風邪を引いていた事を思い出し、3人に詰め寄った。 「まぁ、もうすぐだから待って。」 ユキが真奈美をなだめるように言った。 「もうすぐって？？？」 真奈美がユキを見つめたとき、背後から声が掛かった。 「遅い」 「まぁまぁ」 真奈美が後ろを向くと、ツバサとコウタが居た。ツバサが少しむっとしていて、コウタが宥めていた。 「ツー君、コウタ〜。」 真奈美が二人の名前を呼ぶと同時に、ツバサが真奈美に抱きついた。 ・・・・・・・・・。 も〜〜〜ツー君は抱きつき癖でもあるのかな・・・。いつもこうだもん。 真奈美が抱きしめられながらそんな事を考えているとき、ツバサの頭や体に無数の手が伸び二人を引き剥がそうとしていた。 「ツバサいい加減にしろ。」 「ツバサ！！」 「・・・・・おい！！」 そんなやり取りの後真奈美がツバサの腕から解放されると、殆ど無表情なリョウが現れていた。 ・・・・・・・・・すんごい視線を感じるんだけど・・・・。 真奈美が周りを見渡すと、この店に居る女性客および、女性店員の殆どがこちらのほうを見ていた。 あ〜〜〜騒ぎすぎたな・・・。 真奈美はしゅんとしながら、6人の男たちを宥めようとした。 一つのテーブルに7人が席についているものの、それほど騒いでいるわけではなかったが、一向に人々の視線がこちらに向いたままであった。 もともと女性客の多い店だから、こんなに男の人が居るのが珍しいのかな・・・。 真奈美がぼーっとしている間に、6人がそれぞれ注文したものが次々テーブルに運ばれてきた。 真奈美はツバサとトシヤに挟まれている。 「もしかして初めから皆で集まる予定だったの？？」 真奈美は疑問に思っていた事を聞いた。 「もちろん」 真奈美の問いにツバサが答えた。 「それならそうと言ってよ〜〜。」 「ばらしたらつまんないじゃん。」 「も〜〜ツー君のケチ・・・。リョウは仕事終わったの？」 真奈美は目の前に座っているリョウに尋ねた。先ほどリョウとあったときのバーテンの服装はしていない。 「・・・あぁ。」 他の面々は、トシヤが後から合流するはずなのに今居ることに驚いたり、 真奈美の服を褒めたり、好きなお酒だったり・・・それぞれ会話を楽しんでいた。 |