いつか君に

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「お久しぶりです。あ、あ、あの・・・もう少しトシヤ貸していただけます?」

真奈美は突然の海田という男の出現に戸惑いつつも、冷静になろうとした。

ヤバい、ヤバい、ヤバい・・・・あ〜〜〜どうしよう!!!

「お、おう、それはいいけど、カナちゃん後で飲もーや」

海田は、真奈美に促されるまま(と言うより追い出されるまま)スタッフルームを後にした。



・・・・・・・・・・・・非常にマズイ!!。トシヤとキョウスケの視線が痛いよ〜〜〜。

海田を部屋から追い出すと、真奈美は恐る恐るトシヤとキョウスケに目をやった。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

「どういう事?カナって誰?」

暫しの沈黙の後、声を発したのはキョウスケであった。

「・・・私のことかな・・・。」

真奈美は乾いた笑いを浮かべながら呟くように答えた。

「カナって誰?」

同じ質問を繰り返しトシヤが問う。

「だから、私。」

あ〜〜〜もうどうしよう!!やっぱり説明するしかないか・・・。

「だって、真奈美だろ?」

トシヤが確認するように聞く。

「ハイ。真奈美です。」

「カナは?」

「私です。」

・・・・・・・・・・・・・

三人は、平行線のやり取りを続けた。



このままでは埒が明かない!!!説明しなきゃ・・・。

真奈美は意を決して二人を見上げた。


********************


「さっきの海田サンとは、数年前からの知り合いなの。知ってのとおりここって雅人がホストとして働いていたことがあるでしょ? その時に、海田サンと知り合ったわけ・・・。雅人がすごく信頼してた人でまぁいろいろあって私とも面識があるわけ。 ・・・・・・・・・えっとそれで、私は本当に坂本真奈美が本名。それは間違いない事。で、問題のカナっていうのが、ここら辺の町での私の通称名、コードネームってとこ。 だから、私の事をカナって呼ぶ人は本名は知らないの。海田サンももちろん知らない。だから、ここではカナで通して。」

真奈美の説明を聞いてトシヤが呟く。

「って事は、真奈美が”アノ”カナだったんだ。」

キョウスケも其れにつられる。

「カナね・・・。」

「”アノ”ってなによ・・・。別に悪いことはしたこと無いけど??」

「其れより何で、カナなんて通称名使ってんだよ?なんかの源氏名みたいじゃん」

トシヤのもっともな問いに真奈美はしぶしぶながら答えた。

「言っておくけど、源氏名をつけるような仕事は一回もしたことが無いからね!・・・それにこの名前付けたのは雅人なんだから。 いつだったか、急にカナって呼び出したんだから。この街で本名明かす必要は無いって。最初は反対したけど、いつの間にか名前が定着しちゃってこうなったの。 こっちだって迷惑な話だよ〜〜。でも、必要以上にこの街とは関わろうとは思ってないから、カナのままでいっか。って感じでこうなってるわけ。 理解していただけた?」

真奈美の説明にキョウスケとトシヤは短く頷いた。

も〜〜雅人が人に偽名つけるから、ややこしい事になったじゃない!!

********************


トシヤは何事も無かったかのように指名してきた客の下へ足を運んだ。

真奈美とキョウスケは海田の元へ向かった。

「海田サン、さっきはどーも。」

真奈美は軽く会釈して海田に近づいた。

「おう!まさかキョウの連れがカナとは思わなかったよ。」

「私もカイさんが海田さんのことだとは気がつかなかった〜〜。久々ですね。」

「そうだな〜、なんか飲むか・・・。」

海田はそういうとシャンパンを用意させ真奈美とキョウスケに促した。

真奈美と海田は久々の再会のため話が弾んだが、キョウスケもそれに上手く絡んで3人は和やかに会話を楽しんだ。



「それで、海田サンにお願いがあるんですけど・・・。」

真奈美は、店の奥で接客をするトシヤを目の端に捉えたまま海田をのぞき見た。

「なんだ、改まって〜〜。」

「あのバカを、トシヤを今日は大目に見てもらいたいんですけど・・・。ダメですか?」

「ん〜〜トシヤ?」

海田はトシヤの付いているテーブルをジッと観察した。そして告げた。

「・・OK、分ったよ。キリがいいとこでテーブルから離すから、後頼むよ。」

「ありがとう。」

「今日突然だけど、カナちゃんに会えたことへのお礼って事にしといてやるよ。 雅人にいくら言ったって、カナちゃんを連れてきてくんないしさぁ〜〜、それがキョウスケとか トシヤの知り合いだし、一体どうなってんだかなぁ。近いうちにゆっくり飲みたいな。」

「雅人に伝えておきますね。」

真奈美はニッコリ微笑んで海田に告げた。

「おっ、そろそろチェック入るな。トシヤに上がるようにいっておくから、待っててやって。」

海田はそういうと、スタッフのほうへ紛れていった。真奈美とキョウスケは先にスタッフルームに向かいトシヤが来るのを待つことにした。

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