いつか君に ― 14 ― シャワーを済ませたトシヤは声を弾ませリビングにやってきた。 トシヤがやってきたことに気がついた真奈美は、そちらに顔を向けたが、直ぐに顔を背けた。 その様子を怪訝に思ったトシヤは真奈美の側に歩み寄りながら聞いた。 「どうした?」 「・・・どうしたもこうしたも・・・ちゃんと服着てきてよ〜。ただでさえ風邪引いてるんだから。」 「だって風呂上りで熱いんだもん、別に裸ってわけじゃあるまいし・・・。」 トシヤは下は穿いていたものの、上は何も身に着けていなかった。特に恥じる様子も無く真奈美の側へ寄る。 トシヤは真奈美の隣に腰を下ろすとその場から立ち去ろうとする真奈美の腕を掴み静止させた。 「ちょっと離して・・・。」 真奈美はトシヤを見ずに手を離すように言った。 こんなフェロモンムンムンな状態で近寄らないでよ〜〜。トシヤとは極力二人っきりにならないようにって思ってたのに・・・。 「なに?」 俯き加減の真奈美が言った一言が聞き取れなかったトシヤは真奈美の顔を覗き込むように尋ねた。 下からの覗き込むように見つめられた真奈美は、トシヤの顔に見惚れそうになったが、トシヤの濡れたままの髪から雫が落ち我に返った。 「ちょっと、風邪引いてるんだから、ちゃんと服着て!!あと髪も乾かして!!」 真奈美は顔が赤面しそうなのを抑えるように、トシヤに抑えたれた手を振り解こうとブンブン振った。 「は〜な〜し〜て〜」 じたばたと暴れる真奈美に観念したかのようにトシヤは真奈美から手を離した。 手を離して貰った真奈美は、直ぐに立ち上がりトシヤから距離をとった。 暫しの間の後、トシヤは軽くため息をつきリビングを後にした。 着替えを終えたトシヤが姿を見せたが、真奈美が何を言っても言葉を返すことは無く・・・無言のまま出かけていった。 ・・・・一体どうしたって言うの??私なにかしたかな??? トシヤの態度に疑問を感じた真奈美であったが、その答えをくれる人物は誰も居なかった。 朝起きたときには7人もの男たちがいたマンションも今では真奈美とコウタの二人だけであった。 コウタは寝てるし・・・なんだか少し寂しくなった気がする。まだ、皆とであって一日も経っていないのに・・・。 それぞれがどんな人かって言うのはイマイチ判らないままだけど、悪い人じゃない気がする。・・・・・勝手にキスしたりしたんだ!忘れてたー。ダメじゃん。 自分の順応力がいいのか悪いのか・・・その判断が怪しくなりつつあることに真奈美は気がつかなかった。 日が落ち、辺りはすっかり闇に包まれていた。 「時間になったら自力で起きる」と言って昼過ぎから眠りについていたコウタが起きてきた。 コウタはすっきりした様子でリビングに現れると、キッチンにいた真奈美に後ろから抱きついた。 ・・・・はいぃい???一体なんだ〜?? 思わず体を硬直させた真奈美であったが、コウタは一度ギュッと真奈美を抱きしめると直ぐにその腕を解き何事も無かったようにバスルームに消えた。 キッチンには固まったままの真奈美が取り残されていた。 ・・・それにしても、どうしてここに・・・。と言うかここどこ?? 真奈美はコウタに連れられとあるショップに来ていた。 コウタは店に着くなり、「ミチ」という店員に声を掛けた。 その店員は、待ってましたと言わんばかりの勢いで真奈美を試着室に連れ込んだ。 そして用意していた服を真奈美に着せると、訳が判らないといった困惑気味の真奈美を気にも留めず強引に髪をアップにし、メイクも少し加えた。 ミチは、真奈美が何を聞いても、その独特の話術で質問を流し、真奈美が逃げようとすると有無を言わさず押さえ込み・・・。 気がつくと真奈美は大人しくミチに言われるままであった。 すべての準備が整った真奈美をミチは得意げにコウタの前に晒した。 コウタは照れたような表情を浮かべ、それを見たミチはニヤニヤとしていた。 真奈美はそんな二人の様子に気がつくわけでもなく、冷静に自分の状況を把握しようとしていた。 ・・・こんな格好してどうするんだ??それにこの服って一体いくら?なんでこんな事に?あれれ? 実に今更とでも言うべきことが真奈美の頭の中を駆け巡ってた。 |