いつか君に ― 13 ― 何で皆無言なわけ!??? 真奈美は間仕切りを取り払い出て行ったキョウスケを追いかけたが、 出た瞬間にツバサに捕まったのだ。正確には抱きつかれた。 そして、リビングのソファーに座らされているのだが、真奈美の隣にツバサが座り違うソファにトシヤとコウタが、リョウは一人掛けのソファーに・・・。 リョウは、真奈美と一度は目が合ったが、それ以降真奈美を見ようとはしない。 ツバサは真奈美の隣に座り機嫌が悪そうにしている。ただ真奈美が動けないようにその左手はツバサに握られている。 トシヤとコウタは惚けたような顔で真奈美を見ている。 ・・・・だが、誰も口を開かない奇妙な沈黙があった。 一体どうしたって言うのよ!! 真奈美の不満が溢れかけたその時、キョウスケが口を開いた。 「お前ら何とか言ったら?ガキじゃねーんだから〜。」 キョウスケの台詞に我に返ったようなコウタがすかさず「かわいいよ」と真奈美を褒めだした。 ほぇ!???なに言ってんの?? 一瞬どうして褒められたのか判らないといった感じの真奈美であったが、 リョウの「似合わない」一言で何のことか把握した。 あ〜・・きっとこのメイクのことだな!!キョウスケのことだ遊び半分で色々やったんだ・・・。 あまりにも可笑しな顔してるから、皆コトバなくしちゃったとか!??も〜やだなぁ・・・。 メイク中から一度も鏡を見ていない真奈美は今の自分の顔がどうなっているのか把握できていなかった。 真奈美は出かける準備をしていたキョウスケを睨み付けて小さく言った。 「・・・バカ」 真奈美はそういうとどんな顔をしているのか判らない恥ずかしさから俯いた。 「どうしてバカなんだよ・・・。」 キョウスケはそういうと真奈美の頭の上に手をポンと乗せた。 周りの男たちはなぜ真奈美が俯いてしまったのか判らずかける言葉が見つからなかった。 「ツー君・・・手はなして・・・。」 もうやだ〜〜恥ずかしい・・・。早く顔洗いたい!! 「なんで?」 「だって、顔洗いたいもん。」 真奈美の消えそうな声がリビングに染み入る。 「はぁ??何で??」 しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのは先ほどまで大人しかったトシヤである。 「・・・・だって、皆さっきからおかしいもん。どうせ人のこと変な顔だって思ってるんでしょ? コウタは明らかに挙動不審だったし、トシヤだってボーっとしてるに、ツー君は機嫌悪いし・・・。それにリョウは変って言うし・・・。 キョウスケだって鏡くらい見せてくれたっていいのに・・・。」 「・・・・・・・・・ちょっと待て、お前自分の顔見てないのか?」 少しあせったようなトシヤの問いに、真奈美ではなくキョウスケが答える。 「見せてないよ・・・。つーかお前らに見せるのも嫌なんだけど。」 も〜そんなに人をバカにしなくても・・・・。ツー君手離してよ。 真奈美は先ほどからツバサの手を振り解こうとしているが力が込められているためびくりともしない。 真奈美は、縋るような目でツバサを見つめると、優しそうな顔を向けた翼と目が合った。 ・・・・・・・きゃーーーーーそんな顔で見ないでよ〜〜〜。 真奈美は思わず赤面してまた俯いてしまった。 「しゃあねえ・・・ツバサ手離せ・・・。」 「はぁ?何で?」 「ムカつくし・・・。それに早く納得させるには鏡が必要だろ?」 「それなら俺が連れて行く!」 ツバサはそういうと真奈美の手を引きリビングを後にした。 ちょっとコレどういうこと???私じゃないみたい・・・。原型よりも数倍綺麗に見えるんですけど・・・・。 真奈美はツバサに引きずられるようにして洗面所にやってきて、目の前にある大きな鏡に映る自分の顔をマジマジと見つめていた。 驚いて声も出ないような真奈美にツバサが声を掛けた。 「納得した?」 「・・・なんていうか・・・、キョウスケって凄いね・・・。」 「あはははは」 ツバサは声を立てて笑い出した。 「本当にひどい顔にされたとでも思ってたわけ!?・・・可愛いよ」 「もう!ひどい!こっちは死ぬほど恥ずかしかったんだからね?」 ケラケラとツバサは笑い続けていた。 あの後キョウスケは何事も無かったように仕事に向かい、リョウとツバサもそれぞれ出かけていった。 みんな一様に帰りの心配は要らないと言うことであった。 ってことは、ここに帰ってこないってことかな・・・。 マンションに残ったのはコウタとトシヤ・・・。 トシヤは同伴出勤であるらしく、それまで少し時間がある様であった。 トシヤとコウタは真奈美に「絶対にメイクを落とすな」と念を押してから時間までと、眠りについていた。 時間になりトシヤを起こしに行くと、気だるそうにしながらも目を覚ました。 「ふろ〜」 言うや否やトシヤは、バスルームに直行し、しばらくしてからさっぱりとした様子でリビングに戻ってきた。 |