いつか君に

― 12 ―


マンションに帰る途中、食材や頼まれていたものを買った。

まったく人使い荒いんだから!!!




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「ただいま〜」

「おかえり」

マンションに戻ると、キョウスケが一番先に顔を出し真奈美を迎えた。 出かける準備が整っていたようでその姿はやはりカッコいいの一言である。

美容師と言う仕事柄か、服のセンスもよくアクセサリーなどにも嫌味が無く洗練された雰囲気であった。

「これでいいかな?」

キョウスケに一瞬見とれていた真奈美であったが、頼まれていたメイクボックスを思い出しおもむろにそれを差し出した。

「そ、これこれ!!ありがと。」

「も〜商売道具忘れちゃダメだよ〜。はい。」

真奈美はそういいながらメイクボックスと借りていた鍵をキョウスケに渡した。


真奈美がリビングに入ると、リョウとコウタ、ツバサそしてトシヤがソファーで寛いでいた。

それぞれが真奈美に気がつくと、声をかけた。

「おかえり」 「遅い!」 「お茶〜」 「・・・」

唯一無言はリョウである。それ以外の面々は真奈美にお構いナシに言葉を投げかける。

「ただいま〜。ってかさ、そんないっぺんにいろいろ言われても・・・。」

それぞれがいろいろと言うのを、真奈美は困ったように微笑んだ。

これだけの元気があると、直ぐによくなるな〜。

そんなことを考えながら、出かけたついでに買ってきた食材を冷蔵庫にしまっていった。

そこへ、メイクボックスを持ったキョウスケが現れ、真奈美に声をかけた。


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真奈美は一人掛け用のチェアにすわり大人しくされるがままになっていた。

先ほどキョウスケは真奈美に暇か如何かを聞いたのだ。そして暇なら大人しくしていろと・・・。

・・・・・・え〜と、大人しくって・・・。

一体なんなのか検討もつかない真奈美であったが、キョウスケに連れられるままにしてこのチェアに座らされていたのだ。

そこからキョウスケの動きは素早かった。

リビングを簡易間仕切りをリビングの中に隔離された空間を作り出したのだ。

もちろん、真奈美とキョウスケは二人きりでこの中に居るのだ。

ただ、他に間仕切りが使われていた為、完全な密閉された空間ではないものの、キョウスケが他の4人に何かを言い、こちらの空間に踏み込むことが無かった。

時折、冗談か冗談ではないのか判らない会話が飛び交っていた。


一通りの準備がそろうと、キョウスケは真奈美にメイクを始めた。

もちろん、先ほどユキと出かけるときにもそれなりにではあるがメイクはしていたのだ。

「肌が綺麗・・・ここまで綺麗なのは珍しいな〜。」

キョウスケはそういうと、真奈美の頬にそっと触れた。

う〜〜〜・・・。こんなに至近距離で見られると流石に照れる〜〜〜。

それもその筈、キョウスケは真奈美の目の前に膝をついて立ち膝のようになっている。 そして、真奈美の顔を直ぐ近くで覗き込むように見ているのだ。

・・・・恥ずかしいよぉ・・・・・。

あまりの恥ずかしさに、真奈美は顔を上げていられなくなり俯いてしまった。

キョウスケは、そんな真奈美をみて少し、顔を離すと真奈美に問いかけた。

「結構遅かったけど、もしかしてコレ判りにくかった!?」

キョウスケの思わぬ問いに、真奈美は顔を上げあわてて答えた。

「あ、あの遅くなってごめんね。キョウスケのメイクボックスは直ぐに見つかったよ。」

キョウスケは真奈美のメイクを落としながら会話を続けた。

「それにしては、遅かったけど・・・道でも込んでた!?」

真奈美はキョウスケにされている事にあえて抵抗することも無く、会話を続けた。

「あ〜〜、ユキのね仕事の始まる時間が遅くなってね、二人でケーキ食べてたの。 雑誌にも載っていたお店でね一度行ってみたかった所だったんだけど、すごく美味しかったの。」

キョウスケの手が止まり、真奈美を見つめていたがそれを気に留めることも無く真奈美は会話を続けた。

「ユキってやっぱり仕事柄かな〜一緒に居て飽きさせないって言うか、行動もスマートって感じだし・・・。 結局ケーキも何もおごってくれたし・・・。」

「男が女におごるときは下心ありだろ・・・。」

「あはは、ユキはそんなんじゃないよ〜。大体あんなにカッコいいのにだれかれ構わずガッつく必要ないじゃん」

「じゃぁ、何もされなかったんだ〜。」

「あ〜女として見られて無いってバカにしてるね〜。私だってチュー位はねぇ・・・」

その時キョウスケの手が止まった。

「・・・・・・・・・・・・」

「ちょっとなによ〜。嘘ついてないよ〜。ユキはちゃんとホッペにチュッってしてくれたんだから〜 きっと、可哀想な女にお慈悲のつもりだろうけどね・・・。やっぱりホストなだけあって慣れてらっしゃる」

「・・・・どっち!?」

「どっちって?」

「そのキス」

「え??左だけど?」

真奈美が答える無いなや、キョウスケは真奈美の左の頬を強くさすった。

「ちょ・・ちょっとなに!?」

「別に・・・」

突然のことで何がなんだかわからない真奈美であったが、キョウスケはそれ以上何も言わず真奈美にメイクを続けた。

メイクの仕上げに、グロスを数色取り出しその中の一色に決めたキョウスケはそれをそっと真奈美の唇にのせた。

「眼とじて顎を少しあげて・・・。」

真奈美はキョウスケに言われるまま眼を閉じ少し顎を上げた。

真奈美の唇の上をそっとなぞる感触が伝わる。

「男が女に口紅をあげるのは、それを少しずつ返してって意味があるとか無いとか言うじゃん?」

・・・・あ〜なんか、聞いたことあるような・・・でも、今グロス塗ってるんだよね〜口あけたらダメだよね・・・。

「・・・・・グロスもさぁ、そうかもね。」

リップスティックが唇から離れると同時に、何か暖かなものが唇に触れた。

真奈美は驚いて眼を開けるとキョウスケの顔が目の前にあった。

・・・・・・・・あ・あ・・あ・・・・・・・・・あれ?なに?????

頭が真っ白になりそうな真奈美であったが何とか言葉を口にした。

「ちょっと、なんなの?」

「はい、出来た〜。グロスはそんなもんでいいよ。」

何も変わった様子も無くキョウスケはそういうと片付けだした。

「・・・・あの、、ちょっとさっきの・・・・。」

真奈美は何かを言いかけたが、間仕切りに手をかけていたキョウスケが振り返り、真奈美に囁いた。

「あんまり美味しそうにしてて、俺以外に持っていかれたら嫌だしね・・・。」

キョウスケはいい終わると同時に間仕切りを開け出て行った。



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