いつか君に

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ユキとの会話は思っていた以上に弾み、気がつくと”お客さん”との待ち合わせ時間が迫っていた。

「ユキ、ごめんね・・・大分話し込んじゃったね」

「気にしないで。じゃぁ行こうか。」

ユキはそういうと、伝票を手にしあっという間に会計を済ませてしまった。

真奈美は昨夜会ったばかりの人におごって貰うのに抵抗を感じた為、ユキにお金を払おうとしたがことごとく交わされてしまった。

・・・どうしたらいいんだろう。

なにやら考え込む真奈美にユキは言った。

「じゃあ、これで!!。」

ユキはそういうと、自分の体を少し屈め真奈美の頬にそっとキスを落とした。

「へ・・・」

あまりに一瞬の出来事であったが、何をされたかが判ると真奈美は顔を赤くして頬を抑えユキを見た。

い、いま・・・今のってほっぺにチュウだよね・・・。こんな公衆の面前で恥ずかしいじゃない!!

「・・・・バカ」

真奈美はユキをにらめつけながらそういうと車に向かって歩き出した。

「気をつけて。」

ユキの声が聞こえるたが、振り返ることなく進んだ。




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真奈美は慣れない左ハンドルの車を次なる目的地に向け走らせていた。

次なる目的地は、キョウスケのマンションなのである。

ユキを送っていくときに、ついでにとキョウスケに頼まれたのだ。

キョウスケは美容師であり、ヘアメイクも出来、その腕はかなりいいらし。

今回雅人のマンションに来る際、自身の商売道具であるメイクボックスを忘れたらしく、 それを持ってくることを頼まれた。

キョウスケからマンションの地図と住所を紙に書いてもらい、部屋の鍵を預かってきた。

思っていた以上に、マンションは簡単に見つかった。

マンションの名前が、キョウスケが書いていたものとあっていることを確認すると オートロック解除の為、操作盤に近寄ると、制服姿の女の子がいた。

ここに住んでる子かな?

真奈美はそんなことを考えていたが、その子は誰かを訪ねてきていたようで、部屋の主から なんの反応も無いことを確かめると肩を落とし振り返った。

「・・・あっ・・・・・・。」

その子は、振り返り真奈美を見ると一瞬驚いたような表情をしたが、すぐにその場から駆け出した。

なんだろう?だれも居ないと思ったのに人がいたから驚いたのかな・・・。

真奈美は渡されていた鍵を使い暗証番号を押すとマンションの中に入っていった。


その後姿を、先ほどの女の子はジッと見ていた。




********************


キョウスケの部屋はシックな家具で統一されていて割りと綺麗に片付いていた。

「お邪魔します。・・・男にしては綺麗な部屋。」

部屋に入ると、誰が居るわけでもないのに気づくと声が出ている。

「え〜と、ここにあるんだよね・・・あけま〜す。」

キョウスケに教えられた場所に、頼まれていたメイクボックスはあった。

真奈美はその箱を大事そうに抱えると、キョウスケの部屋を後にした。

マンションのエントランスに下りると、先ほどの少女がいた。

一瞬真奈美の方を見つめるが、すっと眼を逸らしずっと俯いたままだ。

真奈美は、その子が気になって思わず声をかけた。

「あの・・・誰か待ってるんですか?」

少女は、ビクッと体を震わせ少し顔を上げると、周りに自分しか居ないのを確認し口を開いた。

「はい、でも居ないみたいで・・・。」

この子高校生だよね・・・。制服着てるし。友達とかかなぁ〜。でも、今の時期こんなとこで待ってたら風邪引くし。

「寒くない?あ〜その、相手の人に連絡取れないのかな?風邪引いちゃうよ!?」

「・・・あの、携帯通じなくて・・・。」

少女の声が小さく、消えてしまいそうに感じた真奈美はどうしたらいいものか考えていた。

「えっと、ここで待ってたら会えるの?どこか暖かい店とかで待ってたほうが・・・あの、もしどこか行くなら、私車だし送っていこうか!?」

少女はキョトンとした顔で真奈美をみる。

「あ、あの決して変な意味じゃなくて、寒いと風邪引くしなぁと思って・・・。」

真奈美は、キョトンとしている少女に必死に弁明する。

「いえ、そんなこと思っていません。心配していただいてうれしいです。・・・でもこれ以上待っていても無駄ですから帰ります。さよなら」

少女はそういうと頭を下げ外へと出で行った。

・・・それにしても美少女だったなぁ〜。おぉっと、早く帰らなきゃ!!

頼まれていた荷物を車に積み、雅人のマンションに戻る為に車を走らせた。



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