内緒事 静まり返った部屋で、雅人は一人呟いた。 雅人の見下ろす先には、完璧に寝入っている真奈美の姿が 暗闇の中、僅かに確認できる。 寝入っている真奈美の頬にそっと触れる。 それは大切なものを、丁重に扱う仕草に見える。 君は知らないだろう。 俺がどんな気持ちで一緒に暮らしているか・・・。 俺がどんな気持ちでここに帰ってくるか・・・。 俺がどんな気持ちで見つめているか・・・。 俺がどんな気持ちで・・・。 そんな事を考えてもキリが無い。 俺が唯一隠していること・・・。 それは、この気持ち。 本気の気持ち。 切ないくらいの思いを抱えているということ。 中途半端にしか近づけないのは、失いたくないから。 手を伸ばせば触れることの出来る位置を。 俺に向けてくれる笑顔を、声を。 前にも、後ろにも進めない。 それでも、この位置に居ることが出来る。 それだけを願っていたのに・・・。 |