喧嘩 朝から何度目になるか分らない。 真奈美はちっともこっちを見ようとしない。 確かに俺が悪かったと思ってるけど、そろそろ機嫌を直して貰いたいと思う。 折角同じ空間に居るのに、こんなにココロが離れているような気になるのはかえって辛い。 事の始まりはこうだ・・・・・。 昨夜例によって遅くに帰ってきた俺が・・・真奈美の眠るベットに潜り込んだ。 無論お互いにプライベートな部屋は別々にあり、ベットは俺の部屋にもある。 一緒に暮らしてまだ数日であるが、生活習慣の違う俺たちに共有できる時間は殆ど無く、殆ど一人暮らしと変わらない。 少しでいいから、真奈美がここに居る事を感じたいと思っている。 いつも手の中をすっとすり抜けていくような真奈美が・・・・・・・・確かにここに居るという事を。 半ば無理やりココに真奈美を連れてきたから、いつ真奈美が居なくなってもおかしくは無い。 それでも少しずつ真奈美を意識させられるモノがこの部屋に増えていることで僅かな安心を覚える。 それでも、何かが足りなく、こうやって真奈美のベットに忍び込む。 深い眠りについている真奈美を起こさないようにそっと体を寄せ抱きしめる。 壊れないように、傷つけないように、そっと・・・そっと・・・。 柔らかな髪を梳き、頬に触れ・・・・・自分が許された存在であるかのように錯覚してしまう。 そして俺は眠りにつく。 朝、いつも真奈美が先に目を覚ます。 そして、自分のベットにいつの間にか俺が入り込んでいて、しかもその体がしっかりと俺に抱きしめられている。 という事実に驚く。 はっと息を呑んだように体を硬直させた真奈美をさらに強く抱きしめた。 「ちょっと、ふざけないで!!」 真奈美がそういいながら必死に身を捩るのを、まだ覚醒していない意識の元でも無意識に押さえ込もうとしてしまう。 「雅人ーーーーー。」 まだ、寝初めてほんの数時間だろうが、真奈美が起きるこの時間に俺も一旦起きる。 そっと腕を緩めると、真奈美が飛びのくようにベットから出て行く。 そして、俺もベットから這い出るのがいつものパターンなのだが、今日はなんだか 離したくなくて腕を緩めなかった。 真奈美の腰元に回した手に力をいれ、逃がさないように抱きしめたのだ。 真奈美が喚くのも、もがくのも一切喝采無視して抱きしめ続けた。 じたばた動く足をも押さえ、ただただ抱きしめた。 正確には抱きしめる以上の事をしたかったのも事実だが・・・・。 いつも以上に長く真奈美を拘束し続けた。 流石にやりすぎたと思ってみたものの、見事に遅かった。 真奈美は怒ってしまった・・・・・・・。 折角お互いの時間が合う休日だ。 早いところ真奈美の機嫌を直して貰わないとな・・・。 そう思ってさっきから必死に真奈美の様子を伺っている。 「悪かったってば・・・・。」 「本当に反省してる?」 「してます。」 「なら、いつもいつも言ってるけど、自分の部屋で寝てよ。」 真奈美がほとほと困り果てたように言う。 確かに真奈美がここで暮らしてから俺のベットは殆ど用なしだ。 俺が答えないのをよそに真奈美が続ける。 「雅人の方のベットのほうが広いし、寝心地もいいと思うんだけどな・・・。何でいっつも私のとこで寝てるのよ。毎朝心臓に悪い。」 ベットの大きさも寝心地も俺のベットは気に入って入るが、真奈美が居ない。それが大きな違い。 「なんとなく・・・。」 決して、ベットに忍び込んでる理由は言わないし、やめることも無いだろう。 「なんとなくって・・・・。」 「いいじゃん別に。人間カイロだと思って」 「そういう問題じゃないでしょ?」 真奈美がなにやら抗議するが聞き流す。 あれこれ言う真奈美がかわいいと、こんなときにも思ってしまう。 それでも、なにを言われたって止めれないだろうな。 結局真奈美の好きそうなケーキを買った。 朝からの真奈美の怒りは見事に沈静化された模様で、楽しげに紅茶を入れている。 お揃いのカップからやんわりと湯気がったっている。 ケーキの甘さに免じて許して欲しい。 今夜も君の隣に潜り込むであろう俺の事を・・・・・・・。 |