挨拶




「おはよ〜」

まだ半覚醒な俺に優しく声が降り注ぐ。

あぁ・・・真奈美がいるんだ。

そう思うとこの腕の中に抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。


覚めない夢をみさせて欲しい。



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毎朝繰り返される同じような光景。

ソファーもベットもテレビもテーブルも・・・・・・・・。

何もかも今までとは変わっていないのに、たった一人の存在がすべてを変える。

この部屋の空気を柔らかいモノへと変えてくれる。

ギスギスした俺の中の鎧はこの空気に柔らかく呑み込まれている。



ふらふらっとふらつきながらキッチンに近づく。

真奈美と暮らして数日だが、朝食だけはなにが何でも一緒に摂るようにしている。

生活習慣が違うため、そうでもしないと会うことの無い日が出来てしまう。

真奈美はなんとも思わないだろうけれど、俺にとっては一大事!

なんとしても会いたいと思う。

ここに居る事を実感したいと思う。

だからどんなに遅く帰ってきても、真奈美が起きる時には一緒に起きる。

そして一日の初めの挨拶を真奈美から貰う。


これこそ一緒に暮らす幸せだと思った。



香ばしい香りが鼻をくすぐる。

パタパタと動き回る真奈美を視界に止める。



  ふらっ



「わっ・・雅人大丈夫?」

かなり卑怯だっていうのは分っているけど、俺はふら付いたフリをして真奈美に抱きつく。

真奈美は自分よりも大きな俺が寝ぼけてふらついたと思っているであろう。

その小さな腕で精一杯俺を抱きとめてくれる。

真奈美の柔らかな髪にそっと触れその香りに惑わされる。

「んー。大丈夫。」

名残惜しいがそう言って真奈美から離れる。


いつの間にこんなに女々しくなったんだろう・・・・・・・・・・。



離したくなくて、離れたくなくて・・・。



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「おはよう」と挨拶を交わす相手が真奈美だというだけで・・・。

朝が変わる。

日常が変わる。

俺が変わる。



幸せの基準ってものは人それぞれだと思う。


幸せに限りは無いと思う。


いつも、貪欲に求めてしまう。



俺の幸せは、今ここにある。



でも、もっともっと欲しくなる。





  手に入らないと知りつつも・・・・・。


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