さくら

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春日家の長女さくらは、父母もが頼りにするくらい”しっかりした子”である。

幼いころから、父と母のバカップルを目の当たりにていた。
さらに、母美保子のおっとり&ぽやっとした性格がさくらの反面教師となり、 さくらは家族の中でも一番頼りになる存在である。

この春、さくらは22歳になる。



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「さくらー、作田教授のレポート出したか?」

大学の掲示板を見ていると、後ろから声を掛けられた。
声を掛けてきた相手は、幼馴染の〔佐藤 司〕幼稚園から大学までずっと一緒の幼馴染だ。
司は180cm近い身長に、色素が薄く染めてもいないのに若干茶色がかった髪、まっすぐに前を見つめる目には鋭さも暖かさも兼ね備えている。
さくらと司は、自宅から通える距離にある"k大学"の4回生である。
親同士が仲が良いのと、家が隣同士であるため司とさくらも仲がよいのだ。

さくらは後ろを振り向き、満面の笑みで司に答えた。
「もちろん。」

透き通るような白い肌にさらさらの黒髪、パッチリとした大きな目に、クルンと上を向いた睫毛、プルンとしたピンク色の唇・・・誰もが振り返るような美女 それがさくらである。

小さいころから人一倍しっかりしていた彼女を、さりげなく側で支え続けているのが司なのだ。
勉強も家事もほとんどのことを難なくやってのけるさくらにも、たった一つだけ 苦手なことがあった。
それが”恋愛”なのだ。

洗練された容姿に、気配りもできる。そんなさくらに好意を持つ男は昔から多かった。
しかし、幼少期から自分の両親のバカっプルぶりをあまりに見すぎていたため、だれかれ構わず付き合ったりはしなかった。
・・・・・・というのも、物心ついたときにはさくらの側に司がいて当たりまになっていたのだ。

ただし、恋愛ごとがトコトン苦手なさくらなので、二人が男と女として向き合っていくのに少し時間はかかってしまった。
今やk大学の中でも理想的なカップルとして、周囲に思われている。

絵にかいたような美男美女が、お互いに微笑みながら言葉を交わす・・・・。
たったそれだけのことが周囲の目を引いているとは、司もさくらも気がついていない。
お互いがお互いを思いやっているのが、見ているほうにも伝わってきそうな空気を持っていた。
それは、二人が恋人同士である前に、互いに一人の人として尊重しあえているからであろう。

当然のことだが、二人の付き合いは両家の両親が公認であった。





「じゃぁ、今日は他に講義入ってないよね?」

司がさくらに問いかけた。

「うん。今日はもう終わりだよ。・・・司は?」

「俺も終わりなんだ。・・・今から時間あるならデートしよう」

「う〜ん・・・。特に予定もないからいいけど、どこかいきたいの?」

さくらのその問いに、司は柔らかく微笑んで答えた。

「この季節に、さくらと行きたいところなんてひとつだよ」

えっ!?どこだろう?あまりに意味深な彼の言い方に、さくらは司の顔を覗き込むように見上げた。

そんなさくらの視線に気がついた司は先ほどよりもよりいっそう優しい目をしてさくらを見つめ返した。
こんな司がこんなに優しい微笑をするのはさくらにだけであった。

司の微笑から、さくらは何かを感じ取ったようで小さく「ふふっ」と笑うと

「私もそこに行きたいと思ってたの」


二人はお互いに微笑み、桜舞う思い出の場所へと向かった。

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